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金環日食2012特集
with 金星の日面経過2012

2012年5月21日、ほぼ日本全国で観測できる金環日食がありました。

日本列島の多くの地域(特に大都市圏)が金環帯に入り、多くの人が天体ショーを目の当たりにすることができました。

気象条件的には、ちょうど南海上の梅雨前線上を低気圧が通過するタイミングに当たり、 また南東から湿った空気が流入して雨を降らせるなど、太平洋側(金環帯)地域のコンディションが最悪となる恐れがあったものの、 どうにか雨も止み、薄くなった雲がフィルターの役目を果たすなど、何とか観察できる条件となったようです。

金環日食 食の最大付近
金環日食 食の最大付近
国立天文台三鷹キャンパス=午前7時34分【出典:国立天文台】

金環日食 第3接触直後
金環日食 第3接触直後(プロミネンスと彩層)
松本空港周辺=午前7時35分【出典:国立天文台】

日食は、太陽と月、地球が一直線に並んだときに起きる現象です。
でも、完全な日食(中心食)には、「皆既日食」と「金環日食」の2つのパターンが存在します。

これは、月の地球周回軌道、および地球の公転軌道が「楕円」であり、地上から見た太陽と月の「見た目の直径」が常に変化する為に起こります。

月の見た目の直径が太陽より大きく、太陽の全体が隠される場合が「皆既日食」であり、 逆の場合は月の外側に太陽がはみ出して細い光輪状に見え、これが「金環日食(金環食)」である訳です。

金環日食マップ


今回は私総支配人自ら、ほぼ金環帯の中心食線に当たる「和歌山県那智勝浦町浜の宮(道の駅なち)」へ赴き、観察・撮影して参りました。

コンパクトデジカメではありますが、写真を公開させて頂きます。

左上の写真は、太陽観察専用フィルター越しによる撮影の為、太陽が赤橙色に写っています。
また、左列真ん中の写真が、食の最大付近に当たります。

金環日食-1 金環日食-2
金環日食-3 金環日食-4
金環日食-5 金環日食-6
総支配人が撮影した金環日食(時間経過は左上から右下へ)
【和歌山県那智勝浦町…金環食均等度:0.990、最大食分:0.969】
和歌山県那智勝浦町の金環食データ
時刻太陽高度方角(北:0°)
日食開始6時15分25秒16°76°
金環開始7時25分43秒30°85°
日食最大7時28分12秒30°85°
金環終了7時30分41秒31°85°
日食終了8時53分01秒48°97°

前日から日付が変わる頃まで断続的に雨が降り続き、かなり望みは薄かったですが、 金環日食の頃には上空の雲が切れ始め、あとは低空の雲次第という状況でした。

神様の悪戯か、金環開始から終了のタイミングで、かなり分厚い低空の雲が流れてきました。
写真のどす黒い雲がそれです。

しかし、雲が薄くなると日食観察専用フィルターなしでも、観察・撮影をすることができました。

フィルターを通したオレンジ色の金環日食も見たかったですが、肉眼で見れるに超したことはありませんし、 観察できた時間もごく僅かでしたが、ある意味これで良かったような気がします。


また、皆既日食同様、気象衛星画像に月の影が写っていたようです。

今回は画像はありませんが、ご覧になりたい方は 皆既日食2009特集 のページへどうぞ。
(皆既日食も金環日食も、基本同じ現象が起きるとお考え下さい。)

次の金環日食は、2030年6月1日(北海道全域)とのこと。
日食だけでもレアですが、皆既日食、金環日食と分けるとなると、地点によっては100〜1000年に1度という超レアな現象となります。

今こうして生きていることに、そして観察することができることに、本当に感謝しなければなりませんね。

2012年6月6日には、日本全国で観測できる金星の日面経過がありました。

この現象は、金星が月とは比べ物にならないくらい遠くにあるため、日本だけでなく、世界の大半で見ることができました。

また、気象条件的には、ちょうど南海上を梅雨前線を伴った台風3号が東進するタイミングに当たり、 関東など東日本ではあいにくのコンディションとなったものの、 西日本各地は、朝から台風一過の様な晴天に恵まれ、絶好の観察条件となりました。

金星の日面経過は、簡単には「日食の金星バージョン」(太陽の前に出るのが、月ではなく金星)とも言えます。

「食」と言わないのは、太陽の大きさに対して、金星がとても小さいからです。
太陽の面の上を惑星が動いていく様に見えるので、日面経過(又は太陽面通過)と呼んでいます。

金星は、地球よりも内側の軌道をまわっている惑星ですので、 太陽−金星−地球がほぼ一直線状になることがあります。(これを「内合」と言います)

地球と金星が内合となる間隔は、ほぼ1.6年に1回の割合ですが、実際の日面経過は100年以上と数年という、長期と短期の繰り返しパターンで起こります。

その理由は、地球と金星の公転面が3.4°傾いている為で、 たとえ内合になっていても、金星の位置が太陽面から外れてしまうことが多く、 とてもレアな現象となっているのです。

金星の日面経過の時系列図
金星の日面経過の時系列図【出典:AstroArts】
(直線的でないのは、地球の自転による影響のため。)

金星の日面経過図
金星の日面経過図【出典:国立天文台】

今回も私総支配人が、自宅にて観察・撮影を致しました。

コンパクトデジカメではありますが、写真を公開させて頂きます。

太陽観察専用フィルター越しによる撮影の為、太陽が赤橙色に写っています。
また、左列真ん中の写真が、食の最大付近に当たります。(太陽が明る過ぎて見えませんが…)
左列下の写真には、金星以外にも黒点が4つ観察できます。

金星の日面経過-1 金星の日面経過-2
金星の日面経過-3 金星の日面経過-4
金星の日面経過-5 金星の日面経過-6
総支配人が撮影した金星の日面経過(時間経過は左上から右下へ)
【兵庫県加古川市…太陽視半径:946″、金星視半径:29″、最小角距離:548″】
兵庫県神戸市の金星の日面経過データ
時刻太陽高度方角(北:0°)
外蝕の始め7時10分59秒27°80°
内蝕の始め7時28分36秒31°82°
最小角距離10時29分55秒67°116°
内蝕の終り13時30分15秒67°245°
外蝕の終り13時47分41秒63°251°

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金環日食とは違って、撮影は非常に困難でした。
金星がとても小さい為、光量が多すぎても、雲がかかっても、金星のシルエットがかき消されてしまうのです。

また、朝方はともかく正午前後は太陽高度が高く、カメラをほぼ真上へ向ける必要がありました。
昨年冬の皆既月食も同じ条件でしたが、今回は台や三脚を駆使して、何とかぶれずに撮影することができました。

ただ、正午過ぎからは雲が広がってきた為、観察・撮影がほぼ不可能な状態となり、後半は早々に切り上げました。

フィルター越しの肉眼でも観察できましたが、視力が悪ければ難しいのではないかと思われます。
金環日食時は休暇を取りましたが、この日は昼過ぎまで時間が空いていたのでラッキーでした。

金環日食とは違って地味な現象ではありますが、「太陽系」を体感できる素晴らしい天体ショーだったのではないかと思います。

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